MSCは骨髄の細胞の中に1万〜10万個に1個という割合で存在する細胞です。また、加齢と共に減少してゆき、例えば歯周病を発症する年齢では極端に少なくなってしまいます。そのためこれまでは移植に必要な量の幹細胞を取り出すために、たくさんの骨髄液を患者さんから採取しなければいけませんでした。
また、MSCは、ES細胞やiPS細胞ほど自己複製能※1や多分化能が高くなく、ヒトのMSCは培養中に増殖能や分化能が低下してしまいます。そのため従来のヒト血清を用いた培養法では細胞は10倍程度にしか増殖せず、治療に必要と思われる量の確保が困難であり、治療効果を損なう可能性がありました。
そこで、ツーセルは、広島大学 加藤教授(ツーセル取締役)との共同研究の下、MSCの増殖能や分化能を亢進させる培養法(間葉系幹細胞用無血清培地STK1,STK2)を開発しました。間葉系幹細胞用無血清培地STK2でMSCを培養することで、MSC特有の転写因子ネットワークを活性化しMSCの増殖を促進して、分化能を高レベルで維持することができます。(図2、図3参照)
この培養法により、少量の骨髄液を採取するだけで移植に十分な細胞を得ることができ、患者さんへの負担を小さくすることができます。また、この培養法は無血清であることから、狂牛病プリオンやウィルスの混入をなくす上でも再生医療を行なう患者さんにとって有用となります。
現在、ツーセルでは、この技術を基に「臨床で使用可能な安全な無血清培地の早期実用化」をめざして開発を進めております。
間葉系幹細胞用無血清培地STK1®、STK2®は、ライセンス契約を締結したDSファーマバイオメディカル株式会社から研究用として発売中です。
図2 ヒト骨髄由来MSCの増殖能
ツーセルが注目しているMSCとは成体幹細胞であり、すべての人の骨髄から採取が可能です。
また、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞ほどではありませんが、骨、軟骨、心筋、脂肪、神経などの多種類の細胞へ分化する能力を持っています。
この能力のため、MSCの移植によって治療できる疾患の数や患者さんの数はとても多く、MSCの研究は世界中で行われています。ツーセルでは広島大学歯学部とともに、MSCを用いた歯周病の治療において歯周組織の再生医療に取り組んでいます。

図1 間葉系幹細胞を用いた再生医療での適応
MSCは成人の体の中に存在する幹細胞であるため、赤ちゃんになり得る胚を使用する胚性幹細胞(ES細胞)に比べ生命倫理上のハードルが低いと言われています。
また、ES細胞やiPS細胞に比べ癌化リスクが低い細胞だと言われています。MSCの癌化・腫瘍化リスクに関連して、厚生労働省科学研究費によるヒトゲノム・再生医療等研究事業「感染リスクの排除、同一性の確保、免疫反応、ガン化等の抑制及び培地等による有害作用の防止に関する研究」(主任研究者:土屋利江 国立医薬品食品衛生研究所療品部療品部長)は、2009年に、ヒトMSCの安全性(癌化の危険性)を評価するための指標となる遺伝子を絞り込み、骨髄由来間葉系幹細胞におけるp16とCx43遺伝子発現を細胞利用時に確認することが、癌化のような変化が起こっていないかの判断基準のひとつと成り得ると報告しました。
更に、ツーセルでは、再生医療でMSCを移植する際に、移植細胞の品質検査ができないかぎり再生医療の普及や事業化は不可能と考え、正常MSCのバイオマーカーを多数同定して、MSCの品質検査法を開発しました。

従来法(10%ウシ胎児血清 |

無血清培地(STK2) |
図3 骨への骨分化能(Alizarin red によるカルシウムの染色)